2025-03-01

漂流少女

「ホストにハマっちゃった」と話していた。
学生の時も、学生ではなくなった今も、
しんどい気持ちをどうにかしようと一生懸命にもがいているように見えた。
話を聞かせてくれたその日は、この後AVの撮影があるとも言っていた。SNSで知り合った人が個人で撮影した動画をサイトにアップされるのだそう。
撮影時には、彼女は相手に身分証を提出し、同意書へのサインもしなければならない。
でも相手の人はサイトを運営している人に身分証を提出しているらしく、彼女は見せてもらえない。
女の子は身体的リスクも伴う。
それなのに個人情報を教えてもらうこともできない。
それでも気持ちを満たすためのお金を得るために、
気持ちを押し殺しているようだった。

「普段はパパ活だけど、何人も相手するの疲れる。
AVなら1日働いた時と同じくらいの金額もらえるから、しんどい時とかにAV出てる」


パパ活は毎朝10時〜21時まで2時間おきにお客さんと会っている。
そんなに頑張っているのに、自分自身に使うお金はネットカフェ代、洋服、メイク道具くらい
残ったお金は毎日ホストに行って使っているようだった。
アフターで手を繋いでくれたり、
仕事で辛い時も帰っておいでと言ってくれたり、
かわいいねって言ってくれたり、
優しくしてくれたり。
そんな些細なことが嬉しいんだと話していた。

「今度、担当の昇格祭でシャンパンタワーする約束してるんだ。
前に旅行に行ったことがないって話をしたら、
一緒に行こうよって言ってくれた。
その代わりに300万のタワーをすることにもなっちゃったけど。
家族とも友達とも旅行とか行ったことなかった。
修学旅行とかも行ったことなかったから。
でも旅行に行ってみたくて。
それに300万払うっておかしいよね。
分かってる」

気持ちを満たすにはあまりにも高額だと思う。
けど頑張ったことが目に見えて感じやすかったり、
高額支払いの伝票を担当ホストのSNSにアップしてもらえたり。
本人が支払ってよかったとか、また頑張ろうと思うようにできているんだなと思った。
孤独感を抱えている彼女が、
ずっと求めてきたのは人との繋がりだったのではないだろうか。

学生の時はSNS上で話せる人、その後はホスト。
誰か私を見つけてともがいているような気がした。
その為にためにAVやパパ活をして、
でもそんな生活も辛くて、ODをしながら誤魔化しながら日々を過ごしてきたのではないか。
高校生の頃から話を聞かせてくれていた彼女は19歳になった。
変わらずに生活していたのだと思うが、最近ODをして救急搬送されたという。
心配しながら話を聞いていると、入院中に病院の先生が体の心配をしてくれたと話していた。
そして「他人のためじゃなく自分のために生きよう」と何度も説得され、ホストは辞めようと思ったのだそう。
いつもなんて声をかけるか悩んでいたけど、
心配してもらったことで心が揺らいだということなのか。

今の生活を続けているのがしんどいなと思ったのか。
どちらにしてもすごく大変そうに稼いでいたから、
離れようと思えたのはよかったと思った。

それから、病院にいる間は安心できると話していた。
何もしなくてもご飯が出てくる。夜も眠れると。
退院後は実家へ戻っていた。
生活の立て直しをしようと思ったのだと思う。
でもまたODをしてしまった。
そのことで親に暴言を吐かれ、暴力を振るわれ、退院後すぐに家を飛び出したという。
またネット暮らし生活が再開してしまった。
ホストは辞めているものの、生活をするためにパパ活をしているという。

我慢して初期費用貯めれば一人暮らしもできるのかもしれないと言いながら、
でもそれはできないとも言っていた。
「普通にバイトしたいけど高校も卒業してないからできない。高校もちゃんと卒業したい」
今までは目の前のことに必死で、
これからのことを考えたりする余裕がなかったのかもしれないが、
しんどい生活から抜け出したいと考え始めたのかもしれない。

今日、彼女は久しぶりに自宅に帰ると言っていた。
暴言を吐かれたり、暴力を振るってくる母との距離がとりたくて家出していたはずなのに、
お母さんから「寒いし心配だから帰っておいで」と連絡が来たんだと言っていた。

「1人しかいない親だし好きだから。
帰っておいでって言われたら帰りたくなる」
幼少期から暴言を吐かれていたのに、暴力を振るわれて殺されるかもって怖かったのに、
たった一言で自宅に帰ることを決めた。

何よりもお母さんを求めていたのだと思った。
私たちは時々話を聞かせてもらったりするだけの関係かもしれない。
でも彼女の繋がりの一つとなって、何か動き出す時には、できることがあればしたいなと思う。

つい、支援に繋がれないかと説明をした。

彼女が選ぶかどうかは分からないし、選ばなくてもいい。
それでも今まで通り、
時々でも話を聞かせてもらえたらいいなと思う。

取材・文 = 森田あすか / Asuka Morita
NPO法人BONDプロジェクトスタッフ。
家に帰りたくない気持ちを抱えながら、家出を繰り返していた高校生の頃に単行本「VOICES」と出会い、2013年より活動に携わる。現在は漂流少女たちのアドバイザーとして、女の子たちの相談を受けている。
橘ジュン=校正 / Content Editor by Jun Tachibana KEN=写真 /photography by KEN 
※写真はイメージです。本文の内容とは関係ありません。 photo is an image. They are not related to the content of the text.

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