モモは一見わかりやすい「困難」を抱えているかもしれない。
だからわかりやすく必要な人に関わってもらうこともできる。
でも同時に見え隠れするわかりづらい問題を抱えているとも思う。
私はモモにある人を紹介したかった。
モモが考える困りごととは少し違うかもしれないけど、彼女の近くでも困りごとを直接相談できる人がいたら良いと思った。
スケジュールの都合でモモを連れて紹介しに行くことは出来なさそうだったので、電話だけ一緒にして、私は翌朝の飛行機で東京に帰る予定でいた。
電話だけのやり取りでその後上手く繋がっていってくれるか、多少の不安も抱えていたのだが、急遽翌日なら会えるという連絡が先方から入った。
良かったと思ったと同時に私はとても困った。
モモにとっては住み慣れた土地なので、指定された場所まで来てもらえると思われたと思うが、バスでたった5分の場所でもモモがいつも行く場所からは外れていたため、翌朝私が帰ってしまったらきっと一人ではたどり着けない場所だった。
その夜、慌てて航空会社に問い合わせ、飛行機を遅らせた。
モモの日常生活や人間関係はとても限定的だ。
普段の生活の中で何かが起こった時、どこかに助けを求めに行くことが難しいモモは困ってしまうのではないか。何も身動きが取れなくなってしまうのではないか。
身近で見守ってくれる関わりもあるが、
もしも身近な関係の中でトラブルが起きたら?
信頼できるはずの人を頼れなくなってしまうことがあったら?
話し相手を求めているモモは匿名SNSで繋がった人と話したことがここ最近で1番楽しかったことだと言った。
居場所が欲しい若者に人気と言われているSNSで優しく話を聞いてもらえることもあるようだ。
さらに最近はTikTokも始めてフォロワーが急増したらしい。
インターネットでの繋がりが支えになることもあると思うが、
モモに必要なのは、
細かなところまで一緒に行動してくれる人ではないかとも感じた。
人懐っこい印象のモモだけど、こんなことも言っていた。
「Bondに話したのは、
この人たちになら言ってもいいかなと思ったから。
誰も信じてくれなかったし、
そんなことするはずないだろうって言われると思ったから怖くて話せなかった。でも誰かに知って欲しかった。
もし自分と同じような子がいるなら、
気持ちに寄り添ってあげられると思ったこともある。」
これからもモモが連絡をくれた時、
「どうしたの?」と聞くことはあると思う。
そう聞かれると何か困っていることや相談したい理由がないといけないと思うかもしれない。モモはどう答えたら良いかわからなくもなってしまうかもしれない。
雑談はどうでもいい話ではない。
気楽に誰かとの繋がりを感じることができるものでもある。
「ただ話したくて電話してみた」
「相談じゃないけど聞いてほしい」
そんな感じで、
モモから連絡が来る日があればいいなと思っている。
取材・文 = 水野ちひろ / Chihiro Mizuno
名古屋市出身。2010年、BONDプロジェクトの活動を知り、深く関わるために上京。
既存の支援制度からはこぼれ落ちてしまう若年女性の現状に関心を持ち、 スタッフとして活動中。業務全般を行なっている。
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