“1人で手術を受けたし、その人には何も言っていない。
だから相手は妊娠のことを知らないよ。
手術を受けた時の罪悪感がこれまでのことにプラスされてパンクしちゃった。その頃からもっとつらくなった。
自分のことが全部どうでもよくなって、でもつらくて、
ちゃんと働くこともできなくなってしまったから、外で声をかけてきた男の人と過ごしてお金をもらうようにもなった。
怖いこともされるよ。でも無理なの。元彼のこともあって、殴られてきてるから、怖い場面になると思考が停止しちゃう。
病院の先生にも話せてない。
自分のこういうことが恥だと思うから。
働けなくなってお金のためだけど、風俗で仕事もしてきたし、矛盾してるとも思われると思う。“
どれほどの傷を重ねてきたことか。
それでもその傷から回復していってほしいと思う。
出会った頃から彼女は“なんで生まれてきたんだろう”と話していたけれど、自分なりの生きる意味を作っていってほしいとも願う。
そう思えば思うほど必死にもなってしまう。
他の専門的な相談機関も必要なのではないかと考えて、相談を勧めたこともあったが、頼みの綱にはならなかった。
DVの相談に行ったことがあったけれど、上手く言葉が出てこなかったために、窓口の人が苛立っているのがわかり、”来ちゃいけなかったんだ”というメッセージとして彼女には伝わっていた。相談するということも怖くなっていた。
かつて仕事をしていた病院では生活保護のことを見下す会話を聞いたこともあったという。そうした経験からも頼りづらくなってしまったのだとわかった。
“他の人には思わないけど、自分が何かの支援を受けるってなったら「かわいそうな人」になりそうで、惨めに思って病みそう。
それに生きたいと思えないから、相談に行くとか考えられない。
全部自分のせい。私がとろくてできなかったから。親や元彼をそうさせちゃったんだとしか思ってない。
そうじゃないよって言ってくれる人もいるけど、自分がちゃんとできてればっていう思いが消えない。“
“寂しいんだ。
しんどいんだ。
強くなりたいのになれない。
変わりたいのに変われない。“
そう、伝え続けてきてくれた。
全部あなたのせいだとは私も思わない。
だけど、自分を変えたいと願う気持ちもあるのであれば、それはとても大事なもので、受け止めたいとも思う。
ある日、”どうにかしたいと思う時もある”と話してくれた。
“そういう時はちゃんと生活できるようにしなきゃと思う。
仕事して、ODしなくてもよくて。普通にならなきゃと思う。
bondのみんなが言ってくれるからそう思うようにもなっていて、その時はそうしようって思うけど、
1人になると怖くて無理になっちゃう。
今の生活が変わるのも怖い。ちゃんとできない気がして。
もしODしないようにしようとしたとして、でも絶対しちゃうと思うから、その時に申し訳ない、できなかったって思ってしまうと思う。ずっと死にたいしか思ってないから、自分にはできないとも思ってる。
死にたいを消すにはどうしたらいいんだろうな…
病院の薬を飲んでも死にたいは消えない。
メンクリも本当は行きたくなかった。薬をもらったらODしちゃうと思ってたから。
死にたいって言ったら入院って言われるし…“
心の中の感情や傷が交差して、何を選択していけばいいのか、どう歩んでいけばいいのか、
その葛藤の振れ幅も大きくて、戸惑いもあるんじゃないかな。
ODしてお酒を飲んでいた方が本当に言いたいことを言えると話してくれたことも、
きっと孤独な気持ちを抱えてきたことだろうな。
素直に感情を表現することはたやすくはないけれど、感情や考えを伝えることで和らぐ孤独もあるかもしれない。
話聞いてくれるし、怒らないし、殴らない。bondのことをそう言ってくれたよね。
そう思える人たちとの繋がりや時間を増やしていってくれたらいいな。
何か一歩を踏み出そうとする時、ちゃんとできなくても大丈夫。
前に進む時もあれば、下がることもあるけど、そんな状態も否定しないで、少しずつ少しずつでも進んでいけるように。
取材・文 = 水野ちひろ / Chihiro Mizuno
名古屋市出身。2010年、BONDプロジェクトの活動を知り、深く関わるために上京。
既存の支援制度からはこぼれ落ちてしまう若年女性の現状に関心を持ち、 スタッフとして活動中。業務全般を行なっている。
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