2024-07-01

外は暗く、病院の冷たい灯りの中で

”私はたまにふと考えてしまう。
薬で生きているんだな。

薬がないと、どうなってしまうんだろう。”

2024.7/1 ぷーすけ=文 / text by poohsuke
KEN=写真 /photography by KEN 
※写真はイメージです。本文の内容とは関係ありません。 photo is an image. They are not related to the content of the text.

2019年18才の冬、
その日は毎日かつかつに入れているバイトの予定もなく、ママが帰ってこないことをいい事に仲のいい友達と「一緒に死のう」と致死量の薬を飲んで実家の布団で、私は友達と手を繋いで眠った。

起きたら、
私は引き取ってくれる人が居なくて警察署にいた。
2日経っていたが、その時の記憶はあまりない。
数時間後、ママが迎えに来てくれた。
後から知ったが、友達の親が、
帰ってこない友達を心配して通報し、見つかった。

警察署を出て、カフェにママと2人で入った。
呂律はあまり回っていなかったと思うが、
謝罪し、その後、
私は勇気をだしてママにお願いをした。
「もう、このままだと本当に死にそうです。
病院に行きたいです。」
すぐに連れていってくれた。
自分でお願いしていながら、言うのは悪いけど、
地獄の始まりだった。

その場で医療保護入院が決まり、
3ヶ月の入院が始まった。
スマホは持ち込めず、
テレフォンカードを買ってきてもらい、
院内の公衆電話で外部と繋がれる形だった。
お風呂の時間は20分。
日中は作業療法に参加し、ラジオ体操をしたり、
ビーズ等で何か作ってみたり。
刺激をないようにしているのか、
生きているのか死んでいるのか、
まるで分からない空間だった。

私の記憶では、小学生の頃から死にたかった。
それでも明るく振る舞い、
バカな振りをして生きてきた。
両親は小学校にあがると同時に離婚した。
小さな私と、4つ上の兄に「どっちについてくる?」と聞き、その場ですぐに「ママ」と言った。
小学校にあがってからは、余計にママに甘えれなくなった。
寂しくて、家族みんなで住んでいた家にひとりで行き、パパへの手紙を家のポストに入れた。
しばらくしてからママにバレてしまったが、
不機嫌なママと2人で、
数年ぶりにパパに会いに行った。
嬉しくて、そこから小学校の数年間は毎週日曜日は私の中でパパに会いに行く日になっていた。
小学生の私には養育費を払ってないことなんてわからなかったし、自分が可愛げのある子になれば、また家族みんなで住めると思っていた。
でも無理だった。
離婚前にパパに暴力を振られていた兄は、
グレてしまい鑑別所に入った。
ママはその頃からよく泣いていた。
泣いていたら、慰め寄り添った。
グレた兄のサンドバッグにもなった。
兄は、私が小学校高学年の頃から家に帰ってこないことが増え、兄が暴れて開けた壁の穴や、割れた鏡、割れた窓ガラスのアパートの家で、私は1人で、みんなの帰りを待っていた。

ゴミ袋にゴミがいくつも溜まって、使っている歯ブラシは、いつ替えたのか分からないぐらい。
大きな冷蔵庫はボコボコで、
でも中はいつも空っぽだった。
私がパパに買ってもらった大事な可愛いバトンは真っ二つに折られ、兄がキレてママに椅子を投げた時の高さの天井には穴が空いてた。

我が家のいい子を演じてきた。でも限界があった。
死にたくて、消えたくて、
息をするのも苦してくて、
やっとの思いで出した私のSOS「自殺未遂」。

外出許可が降りて、1時間、病院の隣のカフェでママと泣きながら話した。離婚の原因は、私と言われていたけど実は違った。
価値観の違いのようだった。
『私が家族を壊してしまった』
という呪縛も解けたはずなのに。
このまま無事に退院していいわけがない。
病棟の自販機で、缶の飲み物を買い工夫して体を傷付けたり、洗剤を飲んでみたり。
そうすると、身体拘束をされる。
まるで悪い事をした時に与えられる罰のようだった。
腕も動かせず『明日が来るな』と、涙を流した。
『明日、目を覚ましませんように』と、
何度も何度も。

それでも、穏やかで冷たい毎日がくる。
穏やかじゃないと注射で眠らされるか、身体拘束だから、穏やかで冷たいのだ。

その当時、唯一楽しみだったこと、
それはお菓子の販売だった。
台車に段ボールをたくさん乗せて病棟へ来る。
大きな机に広げてくれて、皆それぞれ好きなものを買っていく。
5~6千円分、大きい袋2つ分買って過食嘔吐をする。トイレで食べて吐く。それも泣きながら行う。
とにかく生きていることが嫌で苦しくて、
つらかった。

そんな3ヶ月を送って、ついに退院の日が来た。
嬉しかった。もう治ったのだと思っていた。
でも、また地獄の始まりだった。

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