“自分ではない誰かに、名前だけを置き換えた。
この子の気持ち、伝えるね。
この子の気持ち、わかってあげてよ。“
2024.5/1 竹下奈都子=取材・文 / interview & text by Natsuko Takeshita
KEN=写真 /photography by KEN
※写真はイメージです。本文の内容とは関係ありません。 photo is an image. They are not related to the content of the text.
『私みたいな捨て猫はもう誰も拾ってくれないのかな
こんなに汚されて自分で傷つけて。
ただ誰かに側にいてほしい。隣にいてほしい。
って思ってた。
だけどそんなのはただの欲望でそんな日はこない
あたりまえだよね
頼れる大人とか友達も、一人くらいほしかった。
一度でもいいから誰かにだきしめてほしかった
17歳の誕生日には私はもう死んでるのかな
ほんとは、ただの寂しい子。
ただかまって欲しい子。悲しい子。
って思ってる?
だとしても誰かに話聞いてもらいたい
“カナ“の話聞いてもらいたい』
『“カナ“が高校入った時くらいから
親が情緒不安定になることがしょっちゅうあって、
全部“カナ“に当たってくる
ふつうにイスとか物投げてきたり
包丁向けられることもある
それが耐えられなくなってほんとに無理なときは家出してる。
学校は、牢屋みたいなところ。
教室で孤立してるのは“カナ“だけ。
だけど、どうしても耐えられないときは
トイレにこもってリストカットして授業が終わるまででてこない
保健室登校してたとき保健室の先生に、あなたの行かなきゃいけない場所はここじゃなくて教室でしょ。って言われて
居場所なくされた気がしてそれから何があっても行ってない。
ってゆうか行けない
もう親から暴力ふるわれることも、
学校でいじめられることも、馴れた。
痛いの馴れた。
親は学校で“カナ“がどうゆう生活してるのか
知らないから
家に帰れるときはなるべくつらい顔はしない。
あと、なんでかわかんないけど生理もきてないずっと。相談するひといないからずっと誰にも話してこなかった。』
『“カナ“は3月で17歳になる
だけどこのまま大人になっていくのが怖い
学校もやだ
もう一人はやだ
寂しい
“カナ“には友達がいない
“カナ“には学校にも家にも居場所がない
“カナ“にはお誕生日おめでとうって言ってくれる人もいない
ずっと一人。
誰かに自分を見つけてほしい
自分が嫌い
自分が空気みたい
泣きたい
死ぬのも少し怖いけど
生きてる方がずっとずっと怖い
ただ死にたいそれだけ
もうわかんない全部
もうどうでも
いい17歳になるまでに死ぬ
まだ生きててごめんなさい
メールだから気持ち言えるけど
ほんとは人と直接話すのが怖い
もう死ぬね
“カナ“の存在知ってもらえただけでうれしかった
ありがとう。』
⎯ 最初に連絡をくれたときは16歳。名前は“カナ“。
でもそれは本当の名前ではなかった。
自分ではない誰かに、名前だけを置き換えた。
この子の気持ち、伝えるね。
この子の気持ち、わかってあげてよ。
そう思うようなメールだった。
“カナ“が代わりに伝えた。
自分のままの名前では伝えられなかった。
『あの時ね、ほんとに死のうとした。
このまま飛び降りたら楽になれるんだって思った
だけどやっぱり怖くなって死ねなかった
すごい自分にいらいらして
なんなら親に殺された方がましだって思った
生きてちゃいけないのに死ぬことも出来ないなんて
情けないよねほんと
生きてることに謝りたい
けがってゆうかお腹とかにあざはあるけど
なれたしへいきだよ。
ぜんぶなれてるからへいき。
自分がいけないからしょうがないっておもうようにしてるの。
こんな体どうでもいいし。
でも、どうしてこんなに優しくしてくれるの?
もう嘘つく必要ないと思ったからほんとのこと言う
ほんとは“カナ“なんて名前じゃない。
ほんとの名前は『あいみ』
“カナ“は知らない人につく名前。男の人とか
ほんとごめんなさい
最初、信じて良いかわかんなかったから
ほんとの名前言えなかった…
電話ね、
したいけど話せるかわかんないからできなくて…
でも、ちゃんと話してみたいって思った
会いたい
今ね学校のトイレにいるんだ
みんなは授業中
教室にいられないといつもここにくる
ここでリストカットする
泣ける場所もないからここで泣く
誰かに一緒にいてほしいよ
あいみ』