2026-03-17

大丈夫 だいじょうぶ

bondの方へ
こんばんは。

この前の自立援助ホームのお話、聞いていました。
お話してくださって、ありがとうございます。
昨日実は少しお話しましたが、名乗るのは初めましてですよね。海です。
自立援助ホームのこと、少し調べています。
私はもともと新しい家に行きたい派だったし、区役所にお話を聞きに行こうと思いました。
でも、調べているうちに、今そんなに困っていないような気がしてきました。
もっと小さい時とかは困ってたかもしれないけれど、最近は殴られるとかそこまではされていないし、お父さんにも会っていません。
パパ活するのも、ナンパについていくのも、お金が貰えて、あったかい場所で寝られるから、っていう理由だけじゃないのかも、と最近気づきました。

だってお金をくれなくても、結局夜は道にいることになっても、その時優しくて、たくさんぎゅってしてくれたら、なんかそれでいいからです。妊娠しちゃうかもとか、あー怖いかなぁとか思うけど、今がよければそれでいい。
だから、好きでやってるわけではないけど、すごい嫌でやってるわけじゃないです。
アフピル代出してもらって、あの後心が痛くて。心が痛いってさみしいってことなのでしょうか。
馬鹿でしょう?失望する笑

ごめんなさい。
だから、新しい家に行かせてもらっても、
今まで通り男の人の家に行ってしまう自信があります。
やっぱりお金は他の女の子に使った方がいいし、
新しい家には他の困ってる子が住んだ方がいいと、思いました。

私たちは、ただ家に帰りたくないだけで、帰ろうと思えば帰れます。でも、あんなちゃん(※表に出てくることの多い主人格)と本体(※のあ)のやる気がなくなってるから、お母さんに対応しきれなかったり、いつも言われてる言葉でも傷つくから、帰りたくないだけ。もしも、叩かれたとしても全然大丈夫です。大学のお金も多分少し出してくれていると思うし、むしろ恵まれてるくらいだと思う。それに道にいるのも、もう慣れてるし、もうすぐ冬、終わるし。大丈夫大丈夫。

だから、本当は、まだまだ頑張れるところとか、頑張った方がいいところがたくさんあるから、私たちの今までとかみんなと比べて人に頼るほど困ってはないから、今はあと少し、がんばってみます。

でも、ご飯は一緒に食べたら美味しかったし、初めて知ったこともたくさんあったし、楽しかったこともたくさんでした。教えてもらってよかったこともあって、なんだか、嬉しい気持ちになりました。

困ってた時、お金もご飯も場所もお話も、助けてくれて、ありがとうございました。
長くなってしまってごめんなさい。
まだ限界ではないから、残りの今日も明日も頑張ります。
お忙しいのに読んでくれてありがとうございます。
bondの方に、今日いいことがありますように。

その後、またのあ(人格は誰だっただろうか)からSOSが届く。
久しぶりに実家に帰り、父親から性暴力を受けてのことだった。
シェルターに向かうときに、何も持ち合わせてなかったため、買い物をして向かうことになった。

「食べたいものは?好きなもの、嫌いなものは?」
「これ食べられる?」
という質問に、「何も食べなくて大丈夫」と何度も言い張っていたが、
お菓子売り場を通った瞬間に、急に「これ食べる!」とお菓子を持ってきた。

子どもの人格になった。
遠慮ぎみに、でも嬉しそうにお菓子を見つめる。
少しすると、さっきカゴに入れたお菓子を覗き込み、「これ、私が入れちゃった?」と冷静な表情で聞く。
「これ食べないから大丈夫、返してくるね。」と言い、申し訳なさそうに慌てて戻しに行こうとする。
「いいよ、みんなも食べるだろうし、みんなで食べよう。」と宥める。
そんな、人格がコロコロと変わる会話が繰り返される。
キャラクターグッズの売り場を通ると、のあは立ち止まり、
じーっと嬉しそうにキャラクターグッズを見つめ、
「これかわいいね!」と買って欲しそうに何度も見せてきた。
「かわいいね」と返答しながら、必要な物を探している間に、のあは姿を消した。
(のあからしたら、のあではないけれど。)
本当の子どものように、一瞬目を離した隙に。
何度もどこを探しても見つからず、少し焦ってしまった。
本当にそのままどこかに行ってしまいそうだったが、しばらくすると突如現れる。
無邪気な子どもだったけれど、会計を済ませ、重そうな買い物袋を持っている私を見ると、
「持つよ!」と気遣う、一見頼もしい少し大人な子になった。

翌日、のあはまた日常に戻った。

家に帰って、弟のお弁当を作ったり、
つらくて死にたい気持ちと闘いながら学校に行って、就きたい仕事の勉強をして、
でも行けないときもあって、
家に居られず、家を離れて転々としたり、
母親から「死ぬ」「一緒に死のう」とたくさんのLINEがきて家に呼び戻されたり。


きのうね、人生で1番うれしかったことがあったの
勝手に涙がでるくらいに
それで今、すごくすごく綺麗なものをみたよ
また勝手に涙がでた
涼しい
目が回る
うれしかった

怖い
まだ生きたい
ここで死のう
でもあと少し生きようかな
って、思ってさ、

あのね、おはよう
だれかと見たくて、メールするね

―朝焼けの写真が一緒に送られてきた

今でも、いつも、
のあの心は、めまぐるしく揺れ動いている。
目の前の現実と過去の記憶の波が押し寄せてくる中で。
でも、ふわふわしていても、曖昧な記憶の中でも、
のあ(別人格であっても)が、その一瞬を捉え感じていることは、いつも鮮明で真っ直ぐだ。
のあの中に、のあはちゃんと生きている。

いろんな人格が居ることが良くないという意味ではなく、
安心できる環境で過ごす時間が増えるといいなという意味で、
のあで居ても大丈夫な世界を、少しずつ目の前に増やしていけるといいなと、
勝手ながらに思っている。

無理して強がって誤魔化す「大丈夫」ではなく、
心のお守りの「大丈夫」がたくさん増えていきますように。


竹下奈都子=取材・文 / interview & text by Natsuko Takeshita
NPO法人BONDプロジェクト事務局長。横浜国立大学経営学部中退。在学時に、NPO法人BONDプロジェクト設立前のVOICESマガジンの活動に出会い、若年女性の居場所や支援活動の必要性を感じ、2009年NPO設立時より活動に携わる。業務全般を行っている。
※写真はイメージです。本文の内容とは関係ありません。 photo is an image. They are not related to the content of the text.

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