
2025.5/1 こんぺいとう=取材・文 / interview & text by konpeito
KEN=写真 /photography by KEN
※写真はイメージです。本文の内容とは関係ありません。 photo is an image. They are not related to the content of the text.
あなたのLINEは、毎回少し緊張する。
「彼に殴られた」「食べるものがない」
「保険証がないから病院行けない」
わたしに連絡してくるのは、
決まって何かトラブルがあった時だから。
あなたのLINEをさかのぼってみたの。
1年ぶり。2カ月ぶり。3カ月ぶり。
間隔はバラバラ。
だいたい「ひさしぶり」って、まず送ってくる。
きまぐれのLINE。ほんとのこと言うと、
生きてたんだって安心もする。
こうして覚えてくれてて、
「助けて」って言うようになったのは、けっこう奇跡みたい。
5年前に知り合ったあなたは、新宿にいた。
路上やSNSで知り合った男の家に泊まって、
また歌舞伎町に戻ってくるのがほぼ毎日のルーティンだった。
あなたがよく居た新宿のあの場所。
ある日、あなたと目が合っただけの通りすがりに人に殴りかかろうとして止めに入ったわたしを、今度は蹴ってきて。
何がそうさせるんだろう。
私の頭によぎったのは、そんな考えだったように思う。
少し落ち着いてから、自分で語り始めたのが身の上話だった。
頼れる親が居なくて、体調も万全じゃない。
そんなことも言っていたよね。
大きな声で叫んでポーチから取り出したカミソリでリスカをしたね。
傷口をきちんと水で洗い流そうね。
そういったわたしに「家族でもないのに!私には家族はいないんだよ!」って泣きながら叫んだ光景は、今でも忘れない。
もしかしたら、あなたの根底にある思いの1つなのかなって。
そう考えたりもした。
心の中をほじくり返すつもりはないし、
こっちから詳しいことを聞き出そうとはしない。
だから、「答え」はわからないし、あなたから話す時まで知らなくていいかなって今も考えてる。
肌をつく寒さに冬を感じるようになったころ、「一緒に区役所に行ってほしい」と言ってきたあなたと一緒に窓口に行った。
身内じゃないからって外で待つことになったけど、
途中で出てきちゃったね。
「過去を色々聞かれるのがイヤだった」
最初からうまくいくはずないか。現実はこんなもんだ。
自分に半分そう言い聞かせて区役所を後にした。
男たちの家を転々とする日々を続けていたあなたが「ほら」って見せてきたのは自分の首に残るアザ。
「男に絞められた。だから殴り返してやった」
いつか、殺人事件の被害者としてニュースになるんじゃないかって想像した。
でも、あなたの本名を知らないんだった。気付けないかも。
そんなことを考えて、
あなたと同い年くらいの人のニュースをみると緊張したんだ。
心配は、ちょっと形を変えて現実になっちゃったね。
LINEに届いた動画に気付いたのは、
わたしが少し寝坊した日でたぶん午前8時を少し過ぎた頃だった。
数時間前に、あなたが男を刺しちゃったのがわかる内容だった。
しばらく、連絡は途絶えた。
今は「彼」の家にいるというあなたから時々、気まぐれのLINEが届く。
そこは出た方が良いって正直に何回か言ったけど、まだそこにいる。
そこを離れないと使えない支援制度もあるからって伝えているけど、自分では手続きができないって返答がいつもくる。
でも諦めてはないんだ。
気まぐれのLINEが来なくなる日が訪れてほしいから。
だって、あなたが困りごとから解放されたってことでしょ?
あなたの幸せを感じられる日が1日でも増えますように。
取材・文 = こんぺいとう / konpeito
ライター。若年女性を全国各地で取材。メディアで発信している。
※写真はイメージです。本文の内容とは関係ありません。 photo is an image. They are not related to the content of the text.