2024-12-01

離れたい、でも離れたくない

“そうなんだよね。わかってるよ。
私を愛したいけど、愛せない時。あるんでしょ。
今まで何回もあったんでしょ。
お母さんも苦しかったんでしょ。

私たち似たもの同士だねって言ったよね。”

2024.12/1 竹下奈都子=取材・文 / interview & text by Natsuko Takeshita KEN=写真 /photography by KEN 
※写真はイメージです。本文の内容とは関係ありません。 photo is an image. They are not related to the content of the text.

「ただただ死にたくてどうしたらいいのかわかりません
いつもごめんなさい」

いつもゆうかが私たちにSOSを出すときの言葉。
これ以上の説明はなく、質問しても返事はこない。

同世代の子たちと楽しそうに話すゆうかが、最初は全く想像つかなかった。

何気ない話は笑って話すし、学校行事やアルバイトとなれば人の前に立ち役割をこなす。
自分の弱さや本当の感情を見せなければ、適度に笑って過ごすことができた。

だが、自分の気持ちや困っていること、家族のことを話す場面になると、時が止まったかのように固まってしまう。
手も足も出なければ、言葉も失う。
感情も言葉も、どこかに置いてきたかのようだった。

ゆうかは中高校生の頃から日記を書いていた。
日記を読ませてもらうと、目の前で固まっていたゆうかの姿に、日記の中のゆうかの気持ちがスッとはまっていった。

2022/6/12
20歳の誕生日がくる前に死にたい。
死にたいと生きたいでいつも揺れている。

2022/10/2
みんなの記憶から消えてしまいたい。
いなかった、存在してなかったことにしてほしい。
死にたい。消えたい。つらい。
抱きしめてほしい。さみしいのかな。愛されたいのかな。わからない。
こんな本音なんて誰にも話せるわけないじゃん。

2022/10/12
いつも涙なんて出ないのに
こうやって文字にして自分の気持ちを書き出すと涙が出てくる。
前は泣けたのに今は全然泣けなくなった。
私の気持ちなんて誰も知らない。誰も知れるはずがない。誰にも知られたくない。
だけど、こんなに苦しくてつらくて死にたいっていうことに気づいてほしいのかもしれない。

2022/10/16
親と電話した。
自分のことはいっぱい話してくるのに
私の話は1ミリも聞いてくれない。
無視。いつもそう。
自分がわからない

2022/10/21
やっぱり私の親はいい人なのかな。
私のこと色々思ってくれてるのにそれを私が受け止めてないだけなのかな。ごめんなさい。
一緒にいなくなろうよ。

一緒にいなくなろうとしたことあるよね?
多分私、お母さんのこと好きなんだよ。
すごく心配なんだよ。
私がいい役割をもらったり、いい成績取ったりすると、すごく喜んでくれる。出来る娘嬉しいよね。
自慢したくなるよね。知ってるんだよ。喜んでくれてるの。
お互いの感情が行き違ってるんだね。いつも。今までも。
だからうまく表現できずにすれ違っちゃう。そしてお互い嫌な想いになる。
そうなんだよね。わかってるよ。
私を愛したいけど、愛せない時。あるんでしょ。

今まで何回もあったんでしょ。
言いすぎてしまったとき、叩いてしまったとき、物を壊したり投げてしまったとき後悔したでしょ。

知ってるよ。わかってる。
やりたくてやったわけじゃないってわかってる。
お母さんも辛くて苦しくてどうしようもなくて、イライラとかどこにぶつけたらいいのかわからなかったんだよね。
お母さんも本気で死のうとしたことあるでしょ。知ってるよ。
だからいつも心配だった。

夜出て行って返ってこない日、
本当にいなくなるんじゃないかって怖かった。

私のこと色々思ってくれてるの知ってる。
でもコントロールできないんでしょ。
息ができなくなるくらい泣いた。
高校生の時も中学生の時も。

お互いすれ違ってたんだね。思いが。
お母さんも苦しかったんでしょ。

辛かったんでしょ。後悔したんでしょ。
私たち似たもの同士だねって言ったよね。

きっと私のようにお母さんも過ごしてきたんでしょ。
死にたくて。苦しくて、辛くて。ずっとずっと。


自分と重ね共鳴することで、
何かを埋めようとしていたのかもしれない。

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