SNSを中心に、可愛い自撮りと嘘のない言葉で同世代の女の子たちから憧れの存在だった、める。
お人形のようなルックスに、お姫様のような雰囲気の服装で、全身で可愛いを表現していた。
歌舞伎町でめるのような女の子と出会うたび、立ち止まって、ついその子を目で追ってしまう。
街を歩いて気になる女の子たちに声をかけて話を聞かせてもらうという活動に、もしめるが興味を持ってくれて、一緒にやってくれていたら…。
大人への不信感から女の子たちに無視されてしまうことも多いが、こんな時めるが一緒だったら、そうした彼女たちの警戒を解いてくれたのではないか。
ぼんやりと、そんなことを考えていた。
私新宿が好き
汚れてもいいの
今までの嘘全部バレても私のこと好きでいてね
誰かと比較して褒められても嬉しくねえよ迷惑
お人形さんかと思ったら自分だった
高校生の時嫌なことあるたびにピアス開けて
高校やめてからは嫌なことがあるたびに美容外科予約して気付いたら600万使ってた
マジ無理自分のことマイメロディだと思わないと無理落ち着こ
歌舞伎町座ってたらフォロワーから5千円もらえた
大好きな子が病んでる時いつもうまく声掛けられなくて嫌になっちゃう結局大好きしか言えない
新宿で一人で泣いてるうける
あと15分で家出なきゃなのにUber EATSで頼んだ寿司がまだ届かない死のうかな
生活のためとか整形のためとか好きな人のためとか学費のためとかいろんな理由があって一生懸命働いてる女の子を馬鹿にする資格なんて誰にもないのに
フォロワー十何万人いても好きな人から好かれないので人生虚無
お蕎麦たべたくてしぬ、東京の蕎麦は蕎麦じゃない
蕎麦食べに長野帰りたい
昨日までおばあちゃんが家に来てくれてて昨日帰っちゃったんだけどずっと一人暮らししてるはずなのに寂しくてたまらない
めるはTwitter上でたびたび生まれ故郷である場所のことや家族のことを呟いていた。東京で過ごしていても、いつかは帰りたいと思える安心できる唯一の居場所だったのだろう。
祖母がめるのことを語ってくれた。
「気持ちの波が瞬間、瞬間だった。亡くなる前にも会っていた。別れ際にハイタッチもしたし、その日は珍しく荷物も持ってくれたり、一緒にご飯を食べた。その後は友人といると連絡があった。
まさかあの日が最後になるなんて考えてもいなかった。
周りの人のことを考える余裕がめるには残ってなかった。
心身ともに疲れ果てていたのは確か。それでも頑張ろうとしていたのに。母親のところにいきたかったんだろうな。
あの時、なんでもう1泊しなかったのか。
何ができたんだろう、何が必要だったんだろうって考えてしまう。見守ってはいたけれど、何をどうしてあげればいいのかわからなかった。
めるが揺れている時、もたれかかれる人が近くにいたなら。」
残された者たちの悲しみは癒えない。
めるは生前受けたインタビューでこんな言葉を残している。
――将来の夢は専業主婦だそうですが、なぜ、専業主婦を目指そうと?
仕事をしたくないからです(笑)。
家でクッキーとか焼いてるような生活が理想。神戸屋でパンを買って、成城石井で夕飯のお惣菜を買っているような専業主婦を漠然とイメージしています。
めるが願っていた本心からの言葉だったはずだ。
夢を叶えてほしかった。
そして、めるがこの世から去ってから2年が過ぎ、また冬が訪れた。めるに会いたかった。
でももう会いたくても会えない。そんな想いを永遠に沈めて、
いつまでも「もちめる」を忘れない。
(参照 出典先)
「『アイドルはクビ!18歳・ホテル暮らし・望月める』miss ID | PRESS (2018/11)」
「めるTwitter @mell_mtzk 」
取材・文 = 橘 ジュン/ Jun Tachibana
ルポライター。18歳の頃からアウトロー的な生き方をする少女たちの取材を行う。街中で出会った女の子たちのリアルな声を聞いて伝え、現在も10代20代の生きづらさを抱える女の子たちを支えるために活動を続けている。
NPO法人BONDプロジェクト代表。
bond projectは2022年12月、渋谷のギャラリーにてVOICES展vol.2 『-Sign- #もちめる忘れない 』を開催しました。この企画展は望月めるさんご家族のご厚意により、写真集の印税を寄付していただき企画を行いました。
※この記事は、VOICES vol.21 Sign の内容を一部web向けに再構成しています。内容に伴い、望月めるさんご家族の許可をいただいて掲載しています。
※記事内で扱う匿名ツイート(望月めるさん本人のツイート除く)は、プライバシー保護のため一部内容を変更しています。
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