
“彼女に、
優しい視点で気づいた人はいなかったのだろうか。
助け舟を出す大人はいなかったのだろうか。”
2025.12/1 水野ちひろ=取材・文 / interview & text by Chihiro Mizuno
KEN=写真 /photography by KEN
※写真はイメージです。本文の内容とは関係ありません。 photo is an image. They are not related to the content of the text.
この街では一晩で人生が変わってしまうことがある。
その日どんな人に出会い、どんな過ごし方をしたかで明日からの毎日が大きく動いてしまう。
だからこそ、取り返しがつかないような傷は負ってほしくないし、利用するような人たちと出会ってほしくない。
メイン通りから少し離れたこの道では、最近、客待ちをする女の子たちの姿が増えた。
立ち止まっている人も多く、以前より人通りがにぎわっている。
その十字路の明るい街灯の下に、一人の女の子が立っていた。ホストのような男性に声をかけられても反応せず、ただじっと立ち続けている。私はその様子が気になった。
しばらくすると男性は立ち去り、彼女は再び一人になった。私たちは声をかけ、なぜここに立っているのかを尋ねた。
彼女は「生活費のために」と、ためらいなく答えた。
街で立っている子に話を聞くと、「ホストの締め日があるから」「推しのために働いている」などと話をしてくれる女の子も多い。もちろんそうした子たちも、ただ本人が望んでそうしているのではなく、様々な背景や理由があるのだと思っている。
しかし、目の前の彼女は間髪入れずに「生活費のため」とだけ言った。そのことがさらに気になった。
「本当は生活保護を受けたかったんです」
そうこぼした瞬間、彼女の目から涙が溢れた。さっき初めて会った私たちの前で、気持ちを抑えきれないように涙がこぼれ続けている。
少し話しただけで、彼女が追い詰められていることが伝わってきた。もっと早く私たちが出会えていればよかった子かもしれない。気持ちが引き締まり、詳しく話を聞くため、私たちは場所を移した。
カフェに移動するまでの間も彼女は途切れずに話し続け、涙も流し続けた。
街頭に立ったのは今日が初めてで、私たちに声をかけられる一時間ほど前からあの場所にいたという。
もし声をかけるのがあと少しでも遅かったら、彼女は別の出会いをして、違う明日を迎えていたかもしれない。あのタイミングで声をかけられてよかったと思うのと同時に、あの場にたどり着くまでに、彼女はどんな経験をしてきたのだろうとも気になった。
人気のない街の片隅のカフェで話を聞くと、すでに二時間近くが経っていた。
彼女は明らかに体調が悪く、精神的にも限界を超えているように見えた。仕事が続かず、生活費は底をつき、今月さえも暮らしていけない状況になっていた。
虐待から逃れるために家族と離れて暮らしていたが、どうにも立ち行かなくなり、関係が不安定で頼るのが危険かもしれない親に、それでも助けを求めてしまった。生活が苦しいこと、来週の生活費すらないことも伝えたが、「あんたは大丈夫」と返され、それ以上求めることができなかったという。親もまた、生活に困窮し、精神的に不安定な日々を送っていた。
周りからは元気に見えてしまうのだろうかとも悩んでいた。生活保護など、制度にも少し詳しかった彼女は、役所に助けを求めたこともあった。でもそれも上手く届かなかった。もしかしたら言葉の掛け違いもあったのかもしれない。
ただ確かなのは、彼女が助けを求められる相手が、少しずつ、確実に減っていったことだ。
これまでにも何度もピンチを迎えては、その都度なんとか切り抜けてきた。その度に傷を負い、利用されたり、被害に遭ったりした経験も多かったという。
そして今回は本当にどうにもならなくなり、街頭に立つ決意をしたと話してくれた。







































































